人間として生きていく上で大事な何かが、何の理由もなく悉く欠落していて、それ故に高校で留年してしまった少女・穂波殊。真綿で首を締めていくような日常の中で、友達の存在すらも決定的な救いにはならないけれど、それでもサヴァイヴしていくしかない。『またぞろ。』の世界観は、透徹した冷たさと、間違った人間の物語を長い目で見届けるやさしさによって出来ています。ここまで容赦のない物語は、倒す敵など存在しない「日常」という檻の中でこそ生まれるのであり、『きらら』最大の異端でありながら、『きらら』でなければ生まれえなかった奇書と言えるでしょう。