Cotswolds0405さんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2021!
しあわせ鳥見んぐ (1)
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わらびもちきなこ |
芳文社 |
2021-10-27 |
4コマ漫画の「4コマ1行」が持つ縦の空間の広がりを、天地を総なめにする臨場感に満ちたバードウォッチング表現に活かした発想が白眉な一作です。快活で心地よいキャラクター、ユーモアあふれる言葉遊び、ガチな鳥見技術と鳥の生態描写、写実性とデフォルメのバランスが完璧な鳥の作画……と、他にもいいところを挙げていくとキリがありません。『きらら』では今なお珍しい大学生主人公ものである点を、飲み屋での語らいやドライブの賑々しい描写でうまく活かしている点も魅力的。歴史に残る混戦模様を見せる今年の4otyですが、『万人受けする、一分の隙もない傑作』である本作は頭ひとつ抜けていると感じます。 |
またぞろ。 (1)
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幌田 |
芳文社 |
2021-04-27 |
人間として生きていく上で大事な何かが、何の理由もなく悉く欠落していて、それ故に高校で留年してしまった少女・穂波殊。真綿で首を締めていくような日常の中で、友達の存在すらも決定的な救いにはならないけれど、それでもサヴァイヴしていくしかない。『またぞろ。』の世界観は、透徹した冷たさと、間違った人間の物語を長い目で見届けるやさしさによって出来ています。ここまで容赦のない物語は、倒す敵など存在しない「日常」という檻の中でこそ生まれるのであり、『きらら』最大の異端でありながら、『きらら』でなければ生まれえなかった奇書と言えるでしょう。 |
瑠東さんには敵いません! (1)
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相崎うたう |
芳文社 |
2021-09-27 |
オタクで冴えない主人公と、スクールカーストの頂点に立つ少女のシチュエーション・ラブコメディ。どちらかというと男女ラブコメでありそうな設定から、芳醇な百合を生み出しているのが本作です。「住む世界が違う」と思っていた相手が「同じ人間」であることに安堵したり、逆に意外な弱みにドキドキしたり……といった作劇は、主役とヒロインが同性であるが故に更に映えます。前作『どうして私が美術科に!?』でも魅力的だった、きらびやかな画風と頭の柔らかさを感じさせるギャグもますます切れ味を増し、長く見守っていきたい作品に仕上がっています。 |
ホレンテ島の魔法使い (1)
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谷津 |
芳文社 |
2021-02-25 |
オールタイム・ベスト・キャッチコピー「ここは夢と現の汽水域」を帯に刻んでやってきた本作。不思議な魔法の伝承が観光のダシとして利用される孤島・ホレンテ島を舞台に、実在したかもしれない魔法の真実を追って展開される謎解きの物語は、とにかく理詰めでスリリング。それでいて「観光名所を舞台にしたお仕事もの」としての想像力も豊かで、どこを切り取っても非常に濃い味が楽しめる作品です。この眩暈がするような濃密さをぜひ味わってください。 |
妖こそ怪異戸籍課へ (1)
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柴朗 |
芳文社 |
2021-11-26 |
現代に生きる妖怪を描いた物語は枚挙にいとまがありませんが、本作では彼らを「社会の理解と救済を必要とする無戸籍者」として描いているのが特異で、意欲的です。敢えて極めてマイナーな妖怪や、有名な妖怪の知名度が低い解釈を引っ張り出して愛嬌のあるキャラに仕上げることで、「妖怪を知らなくても楽しめる」作品作りを徹底しているのも好印象。主人公・睦子が抱える意外な背景を軸に、ストーリーの連続性や伏線の配置もよく練られています。『まちカドまぞく』に続いて現れた、4コマ日常伝奇の巨弾に注目です。 |