めしの漫画ではない。戦国時代の雑兵の毎日をつぶさに描けば必然的にめしの描写が多くなるというだけのことだ。作者はこの作品において無名の者を主人公に据えるという挑戦を行っている。そして、いわゆるヒーロー達が跋扈する「戦国時代」の最下層ではこんな身も蓋もない生活が繰り広げられているのだと明らかにする。そこにこそ我々は共感する。我々もまた、ヒーローではない一般庶民なのだから。
食いしんぼなポンコツ女中は命がけの毒見役に転属されたけど、今日もご飯がおいしいです! 呑気で気弱でむちむちな福さんが幕末の世知辛い政治劇に持ち前の食い気と純朴さで健気に立ち向かう姿は読者の腹を空かせ…もとい胸を打ちますね。
2巻まででこの作品はエス文化、当時の和装、華やかな令嬢たちの世界を描いてきた。その丁寧さゆえに大正の時代へ憧れすら覚えたかもしれない。だがその時代性が少女たちを縛るものであることが、令和の視座を持つ紡の目にもとうとう見え始めている。 確かになっていく恋心と、突きつけられる残された時間の短さ。物語はきっと、ここからが本番だ。

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