root23_aさんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2021!
六条さんのアトリビュート (1)
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セトユーキ |
芳文社 |
2021-03-26 |
人は生まれながらにして知ることを欲する。私は、この漫画のこの先をなによりも知りたい。知って考察したい。数多くの美術史の話や雑学が知れて、まるで教科書のようだとこの作品は言われるが、きっと、それだけではない。これは漫画であり、魅力的なストーリーがある。しかも魅力的のくせに、結構色々な事が明瞭に描かれず、暗示的で、読んだ上でさらに考えてようやく味わえる描写だ。決して万人受けではないかもしれないが、作者様は説明しない描写表現を好む方らしいのでそこも関連しているようだ。知識を漠然と見るだけではない、どこまでも能動的に読みたくなる、そんな4コマだ。
本を能動的に読みなさい。今にも頭の中の六条さんが長い話を始めそうだ。 |
またぞろ。 (1)
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幌田 |
芳文社 |
2021-04-27 |
留年生でも、そうでなくても、生きている相手にはやさしくしよう。率直な感想である。穂波殊は決して正しくない。人間が下手。一人で起きられない。変にプライド高い。同じ失敗する。暗い。弱い。…これ以上書いたら殊が可愛そうなのでやめておく。言葉の銃を向けるにはあまりに材料の多い相手だが、逆に彼女の良いところを挙げるとしたら、
いとおしい。
これに尽きる。 |
ホレンテ島の魔法使い (1)
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谷津 |
芳文社 |
2021-02-25 |
「魔法」とは何か。グーグル検索ではこう説明している、「不思議な事を起こさせる術」。ならば私は、この漫画は魔法だと思う。あむと共に謎を解き明かすあのワクワク感は何物にも代えられないし、常にどこかから聞こえてくる変に楽しげな歌が聞こえるし、詰めが甘い観光テーマの統一観は突っ込みどころ満載でとても憎めない。「ホレンテ島 移住 手続き」。またグーグルを開いたかと思えばこの調子だ。いいぞ、もっとやれ。 |
しあわせ鳥見んぐ (1)
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わらびもちきなこ |
芳文社 |
2021-10-27 |
道端のスズメをそこら辺の鳥だと一蹴するほどつまらない人生はない。この漫画の冒頭、主人公のすずは「絵に個性がない」と大学講師から言われてしまう。こんな辛辣な事を言い放つ大学講師でも、私は彼の事をどうも嫌いにはなれない。何故なら私だって普段から他者の個性の有るのか無いのかを無責任に決めている意地悪な奴だからだ。では、その個性とはなんなのか。この漫画が良いのは、すずと共にその答えが分かるからである。この巻の最後、すずが大学で描いた絵は何の絵かをよく見てほしい。何の鳥を見るかではない、普段の鳥をどう見るかだ。 |
はなまるスキップ (1)
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みくるん |
芳文社 |
2021-05-27 |
「可愛いキャラに騙されるな」。私は騙された。
突っ込みの追い付かない倫理観、パロディ劇場、化調、そして急にぶち込まれる真理。シュールなギャグの作品は今までもあったであろうが、可愛らしい絵柄というギャップの暴力さえ、強い。とても、とても良い。作中のキャラ達の言動を現実にやろうものならアウトだが、これは漫画だ。それもぽかぽかでハートフルな漫画だ。笑えればそれで、ぽかぽかできればそれでいいじゃないか。さあ、外の空気を吸いに行こう。暖かな日差しとぽかぽかしよう。 |