SpiraLmeybyさんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2021!
ぎんしお少々 (1)
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若鶏にこみ |
芳文社 |
2021-07-27 |
若鶏にこみ先生の前作「放課後すとりっぷ」に感銘を受けてから、本作の連載中である今に至るまで、ずっと生きがいになっています。
二組の姉妹が離れて暮らすことになり、それぞれが新しい環境で過ごしていく中で『今までの行動心理・性格』が作用されていく瞬間があらゆる所に見受けられ、その綿密さに凄みを感じます。
また、所謂『ナレーション』が非常に少なく、かといってキャラクターの独白で心境が全て語られているわけでもない。必要最低限の文面とキャラクターの表情、心情の雰囲気を示す演出が一コマ一コマに宿っており、その一コマ内全体からキャラクターの心情を全て読み解き、自分で確立した上で、ようやく全貌が見えてくる。読む上での敷居は高いですが、読み込んだ上でのキャラクターの息遣いの精巧さは圧巻なものだと感じます。
そして物語を繋ぐ上で欠かせないのがフィルムカメラ。一話ごとにフィルムカメラや写真の知識や観点を乗せて展開されていきますが、それだけに収まらず、「今、特別に思ったこの瞬間を撮るもの」「撮った当時の思い出を呼び起こせるもの」「自分が見たものを閉じ込めて『楽しい』と感じる瞬間を共有するもの」という風に、キャラクターごとにカメラ・写真に対する思い入れの違いが示されていく所に面白さを覚えました。まだ秘匿されているまほろの原点も含めて…
『カメラが取り持つ縁』…過去から今まで生まれた繋がりと、その先に待ち構える未来を…ずっと観測し続けていきたい。そう願うばかりです。 |
ホレンテ島の魔法使い (1)
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谷津 |
芳文社 |
2021-02-25 |
かつて魔法使いが存在したと言われる島。そんなファンタジーはもう存在せず、現実ならではの観測できる「魔法」を楽しみ、伝承を伝えていく物語。……かと思いきや、魔法使いは実在していた!!
という風に、魔法使いの「偶像的な意義」と「存在する現実」が同居しているのが、この作品を魅力的に映していると感じます。
その世界観への興味に拍子を掛けているのが、谷津先生によって繰り広げられる『多面性の面白さ』。毎度新たな展開で飽きさせない島の日常や、その中に必ず隠されている真実への伏線、さらに「本物の魔法使い」への認識や思想が人物によってバラバラになっている所…一見すると面白い、考えれば調べればもっとずっと面白く感じられる。そんな風にストーリーが凝縮されている所に凄みを覚えます。
そして何より外せないのが、物語を彩る歌。月並みな感想ですが「歌を歌っていればそれだけで問答無用で元気になれる」という感覚に満たされます。1巻のラストのミュージカルは正しくその集大成で、「ホレンテ島の魔法はこんなにも楽しいんだ」という想いに帰結され、集団が纏まっていく姿は壮観でした。
人物の動きや世界観、描かれる魔法の数々やミュージカルなど、今一番『アニメで動いている所が見てみたい』作品です。 |
瑠東さんには敵いません! (1)
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相崎うたう |
芳文社 |
2021-09-27 |
「どうして私が美術科に!?」で名を馳せた相崎うたう先生の最新作。
作品のテーマは多少変われど、先生が描く『等身大の女子高生』の解像度は極めて高く、和村さんや瑠東さん、それを取り巻く環境は現実世界のどこかに実在しているのではないか、という感覚に浸ってしまいます。(そんな風に、作中と現実世界がリンクされているような感覚に味わえる「るとわむ自撮り応援キャンペーン」も最高でした)
また、磨きがかかった画の美麗さも見事で、扉絵はもちろん、キャラクターの表情や背景、心情演出など、描かれる全てが演出として余念無く発揮されているように感じ取れます。
瑠東さんの自撮りから唐突に生まれた繋がりから、この1巻で展開される日常を通して、「一緒にいると、毎日が楽しいんだ」と心の底から思えるような存在に成り立っていく…お互いがお互いにその気持ちをなんとなく自覚するその瞬間が、堪らなく美しく映りました。
「和村さんを選んだ理由」が明らかになっていないよりも手前に『瑠東さんの想い』がまだ少ししか片鱗を見せておらず、想いに追いつきたい読者の心理にあやかるように和村さんを蹂躙する瑠東さんの振る舞いが…見ていて、本当に敵いません。 |
またぞろ。 (1)
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幌田 |
芳文社 |
2021-04-27 |
主人公・穂波殊の「人間がへたくそ」な様を誤魔化しなく、物語として救いが生まれるわけでもなく、ありのまま時が過ぎていく。
そんな様子に、読者である自分自身にも曖昧ながら存在する共感性が作用してか、つい惹かれてしまいます。
『昔から気にかけてくれた幼馴染の存在が、今自分を追い詰める存在へと変貌している』という構図、苦しいけど凄く好き。 |
しあわせ鳥見んぐ (1)
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わらびもちきなこ |
芳文社 |
2021-10-27 |
4コマ漫画というフォーマットの中で4コマに囚われない表現を魅せる作品は幾つか存在しますが、
この作品では特に、4コマ漫画を読む上で自然と行われる視線誘導や連続した空間の表現等にもの凄く長けており、それを見る度に「4コマ漫画ってこんな表現ができるのか…!」と驚かされてしまいます。 |