kenkyukanさんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2020!
シメジ シミュレーション (1)
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つくみず |
メディアファクトリー |
2020-02-28 |
「少女終末旅行」で一躍話題をさらったつくみずさんの最新作。引きこもりの少女が一念発起して押し入れから出た外の世界。それは退廃的であまりにシュールな世界だった。一見して引きこもりからの脱却と言う社会的なテーマの作品と思ったのですが、実際にはこの作者らしい不条理な世界をとつとつと描く独特の作風。荒れ果てた空き地の中にぽつぽつと家が建つのみの寂れた郊外の風景、そこで出会う個性的で異質でキャラクター、そして主人公が何度も来訪することになる夢の世界。その中で科学者であるらしい主人公の姉が、世界を変革するために(?)何事か怪しげな研究をしている。「少女終末旅行」で見せたシュールなビジュアル・世界観でそのまま淡々とした日常を見せるまさにつくみずさんらしい作品。個人的にはやがて日本が訪れるであろう人口が減少し衰退した郊外都市の姿が見られるようでそこにも惹かれました。無機質なビルが立ち並び不可解な生物とも邂逅する、「少女終末旅行」で見た世界を彷彿とさせる夢の光景もまた惹き込まれるものがありますね。 |
しょうあんと日々。 (1)
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桑佳あさ |
メディアファクトリー |
2020-02-28 |
軍艦島(端島)と呼ばれる廃墟の島で、なぜか小さな人間の姿で目覚めた硝安爆薬の少女の小さな日常の日々を描く。かつての人間が残した文化に引かれ、その残骸を追い求めて人間の暮らしを再現しようという姿がなんとも切ない。時折同じく人間の姿となった爆薬の仲間とも出会うけれども、やがて彼女たちはいなくなってしまい、再び孤独な日々を送っていく。以前より多数の作品を手掛けてきた桑佳さんの新境地で、個人的にも「シメジ シミュレーション」と並ぶ今のコミックキューンで数少ない期待作になっています。 |
紡ぐ乙女と大正の月 (1)
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ちうね |
芳文社 |
2020-06-26 |
大正時代にタイムスリップした現代の女子高生と同時代の女子高生たちの交流を描く大正ロマン。庶民文化が花開いたこの時代を舞台にした作品は多数ありますが、このマンガも当時の文化を積極的に取り入れていて興味深い。時代を超えたキャラクターたちの交流、それも主人公を迎え入れる公爵令嬢の唯月(いつき)の心の優しさにも惹かれました。今と異なる厳しい世相で厳格な父からの圧力も強い立場で、それでも見ず知らずのものをかくまう良心とお嬢様らしからぬ茶目っ気ある明るい性格が魅力的です。女学校や貴族の屋敷、大都会銀座などで見られる当時の風俗をふんだんに取り入れたエピソードにも惹かれますね。 |
星屑テレパス (1)
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大熊らすこ |
芳文社 |
2020-07-27 |
人見知りでコミュニケーションが苦手な少女が宇宙人(?)の少女と出会い共に宇宙を目指す幻想的日常ファンタジー。海辺に建つ廃灯台、モデルロケットの製作というリリカルなモチーフと、透明感溢れるこのビジュアルだけで最高です。人見知りな所謂コミュ障なキャラクターは最近よく見るようになりましたが、この主人公からはネガティブな暗さや陰気さは感じられず、ただ自分の言葉が届いてほしいという純粋な想いが強く出たピュアな物語になっている。「おでこぱしー」というおでこをくっつけるテレパシーでの交流も、刺激的なビジュアルながらどこまでも純真さを感じさせるこの作品ならではのモチーフだと思います。 |
エンとゆかり (1)
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しろううらやま |
芳文社 |
2020-09-25 |
圧倒的作画力で見せる明るくもちょっと危うい新米冒険者の挑戦。魔物に襲われる危機を救ってくれた少女エンに憧れ、街の酒場で働く少女ゆかりは冒険者を目指すことになる。ポップで明るい雰囲気のファンタジーで、アトラクション的なクエストもあるなどゆるさも感じつつ、同時に本当に魔物に殺されるかもしれないという怖さも同居しているところにちょっとアンバランスで不思議な魅力を感じました。そしてなんといってもアクションで見せる圧倒的な作画。文字通り4コマの枠を超えるマンガ的演出に一気に引き込まれます。同時にタイトルどおりの一期一会の人と人との繋がりを見せるストーリーにも目が離せない。 |