hito_horobeさんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2023!
マグロちゃんは食べられたい! (1)
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はも |
芳文社 |
2022-12-26 |
一見すると百合コメディだが本質は『ミノタウロスの皿』を思わせる徹底して分かり合えない被食者(魚)と捕食者(ヒト)の異種族交流モノ。しかしながら分かり合えなくても結末を一旦保留し、信頼し合えるし楽しい日常を共有できるという前向きな姿勢がみられ、『ミノタウロスの皿』のその先へと議論を進めている。一方で主人公・みさきも人でありながら魚が極度に好きでなどの点が魚に近く、ヒトか魚かどちらを選ぶのか分からない危うさがつきまとう。結末までの限られた時間の中で結ばれる、アンビバレントな一瞬の関係が輝きを放っている。 |
SAN値直葬!闇バイト (1)
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ムクロメ |
芳文社 |
2023-03-27 |
クトゥルフをきらら漫画に盛り込むにあたって、正気と狂気の揺らぎをどのように演出するか。本作はコメディの形でリアリティラインを浅くとってギャグ時空だから大丈夫だろうと思わせておいて、突如としてそのラインが崩壊して本当の危機的状況が訪れる。そしていつのまにか元のギャグ時空に戻っていて煙に巻くように笑いとして畳んでしまう。果たしてどちらが正気でどちらが狂気なのか……?きらら4コマの形式を見事にハックし、無二のホラーを演出している。 |
メールブルーの旅人 (1)
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こだまり |
芳文社 |
2023-02-27 |
情報の海を旅するポストアポカリプスのSF日常モノだが、そうした仮想の世界を漫画表現の側からも演出している点が見逃せない。たとえば9話扉ページでは、右上から読むとページ丸ごと黒塗りの暗闇で1コマ目の場所が分からなくなっていて、2コマ目で灯りがつくとコマ枠が判明して縦に4コマに並んでいたと分かり、読み方自体が暗闇から何かを発見することの追体験になっている。11話では日常4コマのコマ枠を画面に見立ててその外側を描き画面の向こう側の日常に入っていけない存在(=読者)について言及するという、美少女4コマに対するメタ4コマ表現をやっている。 |
オタク女子が、4人で暮らしてみたら。
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泥川恵 |
幻冬舎 |
2022-12-23 |
日常4コマといえば学生や若者ばかりが登場し、楽しい日常や同居生活が所与のものとして与えられがちであるが、本作はアラフォー女性の実録共同生活の漫画である。同性同士で借りられる家の少なさや社会が婚姻以外の関係を想定していないことなど、萌え4コマのようなフィクションが目をそらしてきた社会そのものがポップに描かれていることに衝撃を受けた。 |
ハッピーセピア 大熊らすこ作品集
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大熊らすこ |
芳文社 |
2023-11-27 |
コンプレックスを抱えた人物の丁寧な造形や、コミュニケーションの緻密さが光る。大熊らすこ先生が一貫して描いてきた「思いを伝えることの大切さ」がタイムトラベルを題材にする形で描かれており、星屑テレパスに連なる要素を見て取ることができる。 |