hnmrskip_is_godさんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2022!

ニチアサ以外はやってます! (1)
猫にゃん
芳文社
2022-03-25
四コマは一ページに4or8個コマが並んでいるだけで工夫の余地はない...そんなことを思っている非四コマ読者に叩きつけたい一冊。作者の四コマ愛は深く、培われた知見から視線誘導やコマ枠の工夫、対比構造など多彩な表現を活用している。それらを部活で自主制作を行うキャラの衝突、葛藤とその変化を表すため華麗に落とし込んでいる。ニチアサ特撮がらみの知識も私にとって知らないことばかりで勉強になる部分も多く作者の特撮愛と四コマ愛から生まれた逸品。 「自分が好きな四コマ」というのが4otyの理念であることは重々承知しているがそれでもやはり「四コマ漫画」を選ぶ上でこれは外せない。
お姉様のVな事情
MOTO
芳文社
2022-11-26
四コマをアニメーションに見立てて展開する作品は昨今珍しくはないが、動画サイトの画面も四角である点に注目しVtuberに焦点を当てた作品。四コマでは構図などで工夫をせずともVの姿とそうでない姿が切り替わっても、読者が違和感なく移行できる点で相性が良い。人気ある変身モノを巧く四コマに落とし込んだ題材である。 …などと通ぶったコメントを出したが、そんなことがどうでもよくなるぐらいの酒クズギャンブラーっぷりが本作最大の要素。どこぞのM1&R1覇者の人がやりそうなネタに 困惑 心奪われた人がほとんどだろう。ストロング流しそうめんやパチンコATM、パ〇活疑惑など、核実験場と呼ばれるきららMAXでも早々見ないひどさである。それでいて変身モノでセオリーとなるような掛け違いなどはきっちりと踏んでおり温度差で風邪をひく。漫画力が圧倒的に高くお勧めしたい一冊。
さよなら絵梨
藤本タツキ
集英社
2022-07-04
タツキ先生の創作論を漫画という媒体に巧みに落とし込んだ傑作。私は「創作者は傷つくリスクを背負っても感情の発露を愚直に記録するものである。」という風に受けとった。この感情の発露の象徴は本作では爆破にあたる。これは明らかにファンタジーだが、ではそもそも創作における真実とファンタジー(虚構)とは何か。カメラを通してみた前中編の母親の姿が全部読むと違って見えるし、父親の「息子に近づかないでほしい」という部分もネタ晴らしがなければはっきりと判別できないしこれもまた編集されているかもしれない。創作物一般において創作者の主観は勿論入るし、なんなら現実の物事も真か偽の二つに判定できるような形をしているかはそれほど自明でない。揺らぐフィクションと現実の境界線を巧みに漫画で実現、さらに結果として大部分四コマの漫画に"なっちゃった"というところが4コマファンとしてはこの上ない衝撃だった。
桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい! (1)
相馬康平/日下氏
芳文社
2022-01-26
なろう系が流行っている理由とは?私は「コンテクストを活用した高速展開説明」や「チートを活用した最速問題解決」などのスピード感や爽快感だと思っている。こういった作品群では問題解決までの過程や変化の推移自体はあまり重要ではない。一方、四コマは特性上緩やかな時間推移や少しずつの変化を表現するのに長けている。四コマは緩やかな変化が重要な日常系を牽引してきた一方、押し寄せるなろう系の波に対し他メディアほど盛り上がりきっていないのはこういう背景があるからではないだろうか。 そんな中本作は悪役令嬢「回避」ではなく「なりたい」現代社会の女の子の話にすることで四コマへの落とし込みに成功した。「悪役令嬢になろうと寄行を重ねながら四苦八苦する」構造はタイトルの時点で容易に想像されつつも、クラス内の立ち位置やキャラの心情変化は時間をかけて表現するという良いとこ取り。でも主人公が思った通りの展開にならないギャップや人をたらし込んでいく様子といった普遍的にウケる要素はそのまま活用、という欲張りセット。これぞ"王"の器。新しいフォーマットを作ったと個人的には思っておりもっと広く知られてほしい作品。
ばっどがーる (1)
肉丸
芳文社
2022-01-26
(自称)不良少女の学園コメディ。今の四コマコメディのトレンドは旧来の起承転結四コマの枠組みにとらわれず、ボケは入れれるところがあればどんどんねじ込むようになってきている。そのなかでも矢継ぎ早に繰り出すギャグとワードセンス高いツッコミが多分に盛り込まれており非常に爽快感がある。四コマ特有のコマ密度の高さもあいまって読後の満足感も高く、四コマギャグの新しい形の一つになるのではないだろうか。 異質な漫画が増えてきているきらら四コマの中では珍しくストロングスタイルな作品だと思うので未読の方は是非。

hnmrskip_is_godさんの既刊部門4コマオブザイヤー2022!!

星屑テレパス (3)
大熊らすこ
芳文社
2022-10-27
懺悔いたします。「おでこぱしーは天才だけれども、『人文学的なコミュ障解消』要素と『スペース・ファンタジー的な宇宙人』要素、工学的な『ペットボトルロケット』要素の話を並行して進めるのはごちゃごちゃしていてとっ散らかっているのでは」などと一巻時点では思っておりました。悪い地球人である私の浅はかな考えに反し、「他者や他分野への理解しようとするコミュニケーションの困難さと尊さ」がこれまでなく巧みに表現されていました。強いレイアウトと緻密な濃淡色トーンの使い分けによる繊細な少女たちの心情描写。その変化を四コマの得意とする時間変化にリンクさせた表現力と飽きさせない構成。天を目指す目標とは裏腹に個々のキャラが地に足ついて成長していく対比構造。すべてが圧倒的でございました。票を投じ作品に対する思いを悔い改めたことをさらけ出した、この私めをどうかお許しください。
またぞろ。 (2)
幌田
芳文社
2022-06-27
「どうしようもないですが...きっとそれでもやっていくしかないんですよ」 何もできないし具体的な目標もない殊だが親友が自分のために堕落(?)していくのは許せなかった。一方、素直な親友とずっと一緒にいるつもりだった麻里矢は、その親友が言い出した約束を"しっかりする=自立し同じ大学に行く"と受け取ったままあの手この手で殊の願い(だと思っていること)をかなえようとする。 そんな彼女たちのすれ違いと果たし合いは佳境を迎えた第二巻。ついに殊は「なにをすべきかはよくわからんけどとりあえず今の自分を全否定する」フェーズから脱却する。圧倒的解像度で人間へたくその日常を抉りだす本作は日常四コマの極致に達したと言っても過言ではないのかもしれない。
ななどなどなど (3)
宇崎うそ
芳文社
2022-07-27
あの陰キャ姫がついに文化祭で踊るまでになった...ボリュームの多い会話劇主体であまり緩急は用いない(大体急)なまま小町の変化を描き切った3巻。何やっても「あ~~~~~」となる状態に入ったのでしばらくは何見せられても面白いと答えるだろう。毎月「本当に8Pあったのか」検証スレが脳内で立っているが何回数えても8pに収まる謎。セリフ量や配置が卓越しているのだと思う。BTRでできた陰キャ主人公の波に乗ってもっと知られてほしい。
はなまるスキップ (2)
みくるん
芳文社
2022-07-27
ブラックジョークで話題沸騰となった一巻に対して、さらにそれを上書きするように現実社会の苦悩に焦点を当てた内容になった第二巻。淡々と写実的に日常を抉りだす「またぞろ。」とは対照的に、本作はデフォルメ絵と雑誌のもつパブリックイメージにてシンボル化されたキャラクター達にてこの生きづらくも皓皓たる現実社会を写し出した。尺の都合生贄として橋倉先生がただのギャンブラーと化してしまった点だけは個人的に心残りであるが、「令和のきらら」という宣伝文句に負けず「きららとは何か」に向きあい続けた至高の作品。
ホレンテ島の魔法使い (2)
谷津
芳文社
2022-03-25
夢と現の汽水域というお洒落キャッチコピーに対して残念な観光地で巻き起こるコメディミステリミュージカル伝承百合ファンタジー。こう見ると無茶苦茶なのにすべてお要素が緻密に組み合わさった傑作。「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」とはSF作家の言葉だが魔法使いから見た視点を取り込むことで、「人が魅せられる」という普遍的なテーマを非常に色鮮やかに表現した。ミュージカルをここまで漫画で浴びることができるんだ、という感覚では今後これを超えるものが出てこないと言い切れるぐらい。

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