kawada0zoさんの選んだ新刊部門4コマオブザイヤー2023!
メールブルーの旅人 (1)
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こだまり |
芳文社 |
2023-02-27 |
きらら系だと「棺担ぎのクロ」、その他有名作品だと「キノの旅」のような、様々な特徴的な世界を訪ね歩く物語。毎回行って帰ってくるので「敵が出てこない『タイムボカン』」という例えが妥当か(おじいちゃん絡みだし)。ただ、「主人公一人残して人類は既に滅亡しており、訪問先は情報世界」という設定が独特で、物悲しいムードを基調としている。情報世界に住むほうが幸福かもしれない、という反転まで描かれるのだ。……などと特徴を書き出すと少々堅苦しくなるが、基本は奇抜な異世界の描写を楽しむ作品。基本が一話完結で読みやすく、絵柄も端正だからつまずかずに読めた。 |
うさパン焼いて悪いかよ! (1)
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山本アヒル |
芳文社 |
2023-07-27 |
既に供給過剰な「純情ヤンキー女」のテンプレに、ふた時代遅れの「暴力ヒロイン」を掛け合わせた主人公の造形は正直どうかと思う。ていうか第1話冒頭で何の落度のないそこらの非力なサラリーマンをボコるから、暴力ヒロインどころかただの暴行犯だ。けれども、そういうネガティブな印象がどうでもよくなるほどよく出来たマンガなのだ。「かわいいパン」の商品企画とデザインは過度にうんちく的でないからこそ分かりやすく、登場人物がみな生き生きとしているし、朴念仁の男主人公をめぐるラブコメ部分もドラマを彩る。作者の地力というか基礎的なマンガぢからを感じる一作。 |
みこどもえ 現役巫女が描く世界一地味な巫女マンガ (1)
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吉良さゆり |
竹書房 |
2023-09-23 |
身近なようでよく知らない、巫女という職業の実態を赤裸々に描いた実録風お仕事マンガ……のはずだ。いや実際そうだけれども。「へぇ」と感心することしきりだけれども。共感も同情もするけれども。……「同人誌も手がけてるオタク女」「元ブラック企業社員のガチ婚活勢」「コミュ力強めのヤンキー」という主役3人のキャラがキワキワに際立っていて、普通にギャグマンガとしても成立している。リアルな巫女の実態ベースなのにマンガ的、という絶妙の匙加減で成り立っている作品。『まんがライフ』の忘れ形見その1。 |
騎士じいや 姫様の執事は元騎士団長
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まどろみ太郎 |
竹書房 |
2023-06-15 |
「おてんばなお姫様が想いを寄せる白騎士の正体は口うるさい執事のじいや」そして「姫様以外は騎士の正体を知っており二人の関係を生温かく見守っている」という設定がほぼほぼ全て……と思いきや。その基本設定を無理に引っ張ることなく、中盤以降さまざまな波乱を迎えて二人の関係は変化していき、そしてこの一冊でサクッと完結するから意外にもストーリー性豊か。作者には2巻3巻と続く構想もあったのかもしれないが、結果的に収まりのよい作品となっている。『まんがライフ』の忘れ形見その2。 |
殺っちゃえ!! 宇喜多さん (1)
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重野なおき |
リイド社 |
2023-05-29 |
戦国三大梟雄が一人、宇喜多直家。人は彼を「暗殺大名」と呼んだ! …ってすみません、よく知りませんでしたこの人。でも予備知識無しでもガッツリ面白いです。幼少期から始まるのがNHK大河っぽいですが、読後感はむしろ「ダークヒーロー誕生編」。直家はなぜ暗殺(ていうか闇討ち騙し討ちですね)を手段に選ぶようになったか、初めての暗殺をいかにして果たしたかが丁寧に描かれている。それでいてギャグマンガ基調だから軽く読み進められました。あえて言うまでもないのですが、(たぶん)史料から大きく逸脱することなくいかにもマンガ的なキャラクターを生み出す手腕も相変わらず見事です。 |